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コンサルタントコラム

2015年3月4日

◆ エリート社員だからこそ陥る「罠」 ◆


「上司は業界の知識や経験がないので、相談しても明確な答えをもらえないん
 ですよ」
「上はなんにもわかっちゃいない。部下と愚痴をこぼす毎日です」

リーダーシップ開発研修「パラゴン」受講者の田代さん(仮名)が、自身の
パラダイム(仕事観・価値観)を分析している途中で叫ぶ。

関東圏内に5店舗を展開するカーディーラーのA社。
A社にヘッドハンティングされた田代さんは、新規事業である飲食事業部の
現場責任者を務めている。

田代さんの「飲食業のスペシャリスト」としての実績が、A社に買われたのだ。

田代さんの上司の山野部門長(仮名)は、飲食についての知識は皆無だったが、
飲食事業部に懸ける、明確なビジョンがあった。

「3年以内に10店舗のオーガニックレストランをオープンする」
「10店舗オープンする頃には、新しい部門長として田代さんを推薦したい」

それを聞いた田代さんは期待に胸を膨らませた。

しかしその期待とは裏腹に、田代さんの意向とは違った形で、第1号店の
オープンが進められてしまった。

「店舗内装についてもメニューに関しても、私の意見を聞いてくれない。山野
 部門長の独壇場です」
「案の定、来客数は一向に伸びない。一体どうなってしまうんですかね…」

まるで他人事のように話す田代さん。それに見かねた同じ班の佐川さん(仮名)
が口を開いた。

「今の発言は聞き捨てなりませんね。責任者である田代さんがそんなことで
 どうするのですか」
「もう何年も同じ職位の私からしてみれば、今の田代さんのポジションは本当
 に羨ましい。山野部門長はこんなにもあなたに期待しているじゃないですか」

田代さんの拗ねているような態度に、同じ班のメンバー全員がこの佐川さんの
指摘に頷いた。そして続く言葉が、田代さんの心を深く抉った。

「今の田代さんは、“飲食のスペシャリスト”という立場を笠に、部門長の
 悪口を言っているだけですよ」

ショックを受けうつむく田代さん。声を震わせながら自身を省みた。

「…本当ですね。私は今の批判者としての立場が心地よくて、それに甘んじて
 いただけだったのかもしれません」
「飲食業の、唯一のスペシャリスト。その私が、今の自分に慢心していては
 いけませんよね」

前職で優秀な実績を残した中途社員。
異例のスピードで昇進したエリート社員。
新規事業の立ち上げに大抜擢された社員。

優秀と言われる社員ほど、陥りがちな罠が存在している。
「過去の実績や成功体験で“アンチ上司”に変化してしまう」ケースである。

上記の田代さんの場合、前職での実績が慢心を生み、上司にとって心強い味方
であるはずなのに、単なる批判者へと変貌してしまった。

アンチ上司となって陰口を叩くのではなく、「経験者として、いかに上司を
フォローできるか」ここに集中して、リーダーシップを発揮してほしい。

佐川さんのアドバイスをきっかけに、目が覚めたような顔をする田代さん。
その決意に燃えた強い眼差しを見て私は、飲食事業部の成功が、A社の手元に
ググッと引き寄せられたことを実感した。

株式会社フェイス総合研究所 上席執行役員 四宮 敬仁