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コンサルタントコラム

2015年3月25日

◆ 受講者の上司の対応が研修効果の成否を決める ◆


「私の課題は“上司と信頼関係を築くこと”」
「でも私の上司は、いつも何を考えているのかさっぱりわからないんです」

楠本係長(仮名)は、A社でも数少ない女性管理職。
職歴も長く、会社の情報に精通しており、その実直な仕事ぶりで周囲の評価が
高い。そんな優秀な楠本係長において、唯一とも言える課題が『上司との関係
性』だった。

職場の仲間から彼女に送られたコメントには、

・上司の気持ちをもっと汲み取ってあげるべきでは?
・上司のプライドを傷つける言動をとっている。
・上司の松田課長(仮名)に対して、厳しすぎる接し方をしている。

という言葉が並ぶ。

「報告をしてもなんの返答もしてもらえない。返答があったとしても、なぜか
 自分を飛び越えて、直接私の部下に返答したり、新しい分野の仕事について
 相談したときも『そんなこと、僕に聞かれても困るよ』と返されたりで…」

同情すべき話とも思ったが、それでは楠本係長に成長はない。
私は改めて、楠本係長に戒めの言葉を送った。

「今の楠本係長の状態を一般的には『他責の状態』と言います。このまま松田
 課長が変わるのを待ち続けても、今の状態は改善されないでしょう。職場に
 戻ってからもう一度、しっかりと松田課長と話し合いの場を持ち、楠本係長
 の気持ちを理解してもらう事が大事だと思います」

涙を拭いながら頷く楠本係長。
他人に左右されるのではなく、自らの力で前進しようとする楠本係長を見て、
私は今回の研修での手ごたえを感じた。

実はこの話で重要なのは、後日談である。

松田課長のさらに上司にあたる佐々木部長(仮名)に、研修後の状況をお伺い
したときのこと。

「楠本係長、変わりましたよ。以前より積極的に、松田課長とコミュニケー
 ションを取ってくれています」
「ただそれに対し、松田課長の方が及び腰でして…。楠本係長の変わりぶりに、
 松田課長も戸惑っているのだと思います」

佐々木部長は続ける。

「だから、私は松田課長に伝えました。“少なくとも部下は変わろうとしてい
 る。その想いに応えてあげることが、上司としての役目なのでは?”とね」

私はこの一言に、大きく頷いた。

研修後は、上司の関わり方が非常に大切である。
高い研修費と大事な時間をかけて、より良い学びを得て帰られる受講生の方々。

その学びを生かすも殺すも本人次第とは言え、それを見守る上司の影響力も
大きい事を、私は痛いくらいに知っている。

それは今回の楠本係長のように、上司との関係性に問題があるケースだけに
留まる話ではない。

「研修をしても、上司が変わらなければ、意味がないんですよね」
「受講者がどんなに頑張っても、上司次第で研修の効果が薄れてしまうんです」

私は業種・職種に関わらず、多くの人事担当者からこのような声を聞く。
だからこそ、今回の佐々木部長のお話は、私の胸に大きく響くものがあった。

部下を研修に行かせて安心しているようでは、上司としてはまだまだ半人前。
むしろ部下を研修に行かせたら、改めなければならないのは「上司」の方なの
である。

部下が研修に行くことで、それに触発された上司自身も、兜の緒を締める。
そんなスパイラルができれば、企業の人材育成は著しく進歩するのではない
だろうか。

株式会社フェイス総合研究所 上席執行役員 四宮 敬仁