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コンサルタントコラム

2015年4月15日

◆ 自身の可能性にフタをしてはいけない ◆


「みんなごめん。僕がみんなの可能性にフタをしてしまっていたことに、いま
 気づいたわ」

新入社員研修の最終日。人事課長の坂田さん(仮名)が、沈痛な面持ちで語り
始めた。

「正直、みんながここまで成長してくれるとは思っていなかった」
「たかが3日。されど3日。こんなに成長してくれて、僕は嬉しい」
坂田課長の目に、少し光るものが見えた。

関西に本社を置くF社には、この春15名の新入社員が入社。

「社会の厳しさを、様々なワークを通じて体験させてほしい」

という依頼を受け、私は身の引き締まる想いで、この3日間の研修を担当させて
頂いた。

3日間のうち、最も気づきの多かったプログラム「タイムトライアル」。
5名に分かれたチームが、障害物を乗り越えながらスピードを競うアクティビ
ティーである。
各チームで10分間の練習を行い、その後にチームリーダーから「目標タイム」
を申請してもらう。

「四宮講師、A班は10秒でお願いします!」

すかさず私が答える。

「10秒?練習で既に11秒を出していましたよね?」
「そんな“ちょっと頑張れば”達成しそうな目標で、皆さんは満足できるの
 ですか?」

A班リーダーとのやり取りを聞いた他2人のリーダーも、動揺を隠せないまま
すごすごと班に引き返しては申請を繰り返す。

全く妥協しない私に対して、最終的に決まった目標は3班すべてが『5秒』。

新入社員はもちろん、オブザーバーである坂田課長からも心配の表情が見て
とれた。

あまりに高すぎる目標タイムに対し、各チームは当初練習で出していた記録も
なかなか上回れない、悲惨な状況に陥る。
しかし「失敗の原因」について幾度となく話し合いを重ね、何度も練習を繰り
返し、各班がそれぞれ独自のノウハウを蓄積していく。

10秒が8秒に縮まり、8秒が6秒に…。
汗が噴き出し、上着を脱ぎ捨て、全員の集中力が一点に集中されていく。

何度もトライアルを繰り返しながら、約1時間が経過した頃だった。
C班のメンバーたちがとうとうやってくれた。

「C班、4.8秒! 目標達成、おめでとう!!」

私は大声で告げた。
歓喜にわき、抱き合って喜ぶC班メンバー。中には泣き出す社員もいる。

C班の達成を目の当たりにし、さらに本気度が増すA班とB班。

「A班、5.0秒ジャスト!目標達成おめでとう!」
「B班、なんと4.6秒!最高記録更新!おめでとう!」

自分たちには「出来っこない」と決めつけていた目標。
講師に無理強いされ、無理やり掲げた目標。
最初から諦めていたメンバーもいたはずである。

しかしこのアクティビティーを通し、“自分たちの可能性を信じること”の
大切さに、何人もの社員が気づいたはずである。

アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールは「ピグマリオン効果〜
自己成就予言〜」として「人間は期待された通りの成果を出す傾向がある」と
主張した。
自分なら、このメンバーなら目標達成できる。そう互いに期待し、信じて取り
組んだからこそ彼らは最大限に力を発揮し、「無理」と思われた目標を達成し、
感動を得ることができた。

社会には多くの「高い目標」「困難な状況」が待ち受けている。
それらを「出来っこない」と決めつけず、自分の可能性を信じて挑戦する。

真摯に取り組むF社の新入社員を見て、私も改めて「自身の可能性にフタをし
てはいけない」。そんな大事なことを学ばせてもらった。

株式会社フェイス総合研究所 上席執行役員 四宮 敬仁