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コンサルタントコラム

2015年7月22日

◆ 社員にも「まさか」という坂がある ◆


「会社も、社長も大好きです!」

屈託のないチャーミングな笑顔で、目をキラキラとさせながら北川主任(仮名)
が言う。

入社4年目の彼女はお店のムードメーカーとして、仲間はもちろん、お客様か
らも慕われている人気者だ。

人情に厚いことで知られる同社の吉本社長(仮名)にとっても「目の中に入れ
ても痛くない」ぐらい、可愛い部下の一人であるようだ。
常にサービス精神旺盛であり、また天真爛漫な彼女の発言を聞いていると、
吉本社長が目をかけたくなる様子も大いに頷ける。

しかしその一時間後。北川主任を含めた主任研修の講師を務めた私は、彼女か
ら信じられない言葉を耳にする。

「苦手分野にチャレンジするのが、本当に怖いんです…」

先ほどまでのとても明るかったその人とはまるで別人のように、北川主任は
怯えてすっかり自信を失くしてしまっていた。
不思議に思った私が尋ねると

「社内の試験に落ちると、会社を辞めさせられてしまうのです…」

彼女の瞳からは大粒の涙が溢れ出した。

この話は恐らく事実ではなく、ほぼ北川主任の誤解によるものであろう。
しかし北川主任が『そのような考えを持っている』というのは、紛れもない
事実であった。

「私は会社も、お店も、上司も、社長も、お客様も大好きで、この仕事も大好
 きです。でも、どうしてもお店の管理業務が苦手で…」
「主任としての立場上、苦手分野にチャレンジしなければならないことは頭で
 は理解できているのですが、“会社を辞めさせられてしまう”と考えると、
 どうしても一歩踏み出せなくなるのです…」

よくよく話を聞いていく中で、苦手なものと向き合わなければならない北川主
任の辛い想いは、こちらも大いに共感できた。

同時に私は、このことに対して大きな危機感を覚えた。
(北川主任の想いや真意を、いち早く社長や店長に伝えなければ…)

試験・評価・ノルマなど、会社から与えられるプレッシャーは、時にその人を
鼓舞する上でとても重要なものである。しかし度が過ぎてしまうと、今回の
北川主任のような「まさか」と思える誤解へとつながる恐れもある。

万が一、その誤解が一人歩きしてしまい、強いカンパニー・ロイヤリティーを
持つ素晴らし人材が本当に辞めてしまう事態にまで発展すれば、経営者として
はこの上ない損失と言える。

私はこの研修を企画して本当に良かったと思っている。もしこの研修がなけれ
ば、あらぬ誤解により重要な戦力が一人欠けてしまっていたかもしれない。

どんなに愛社精神の高い社員であっても、どこにどんな「まさか」の坂が潜ん
でいるかはわからないのだ。ちなみに北川主任は研修を振り返り、最後にこう
まとめた。

「今まで現実から逃げてばかりでしたが、私は決してこの会社から離れたくあ
 りません。自分の苦手分野を克服するために、人の2倍も3倍も頑張ります!」

吉本社長も北川主任の想いや真意を間違えずに確かめられれば、十分にご納得
されることだろう。

このコラムを読んで「ハッ」とされた方は、すぐにでも対象者の元に向かい、
対話と相互確認をオススメする。

社員の心の奥底にある「まさか」に気づき、「下り坂」を減らし、一つでも多
くの「上り坂」を増やしていってほしいと心から願う。

株式会社フェイス総合研究所 上席執行役員 四宮 敬仁