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コンサルタントコラム

2015年9月2日

◆ 子供の泥仕合 ◆


大阪に本社を持ち、東京に支店を構えるA社。
豪快で「超」がつくほどポジティブ思考の高山社長(仮名)の下、広告代理店
として現在、非常に芳しい成長を遂げている。

そのA社の「経営幹部向けリーダーシップ開発研修」の中で、営業部門を牽引
するマネージャーの木下課長(仮名)が悲痛な面持ちで吐露した。

「これまでずっと数年間、中村課長(仮名)との間で『子供の泥仕合』をして
 いたのですね」
「そんな姿を部下に見せていたと思うと、本当に恥ずかしいです…」

木下課長と中村課長。
共に30代後半の二人は営業部門に所属し、それぞれの管轄マーケットで抜群の
成績を上げている。直属の部下からの信奉は厚い二人だが、いかんせん仲が悪
い。それぞれに派閥を作り、何かにつけて意地の張り合いをしているという、
いわゆる『犬猿の仲』である。

会議でも互いの意見を主張するばかりで共に受け入れようとせず、周囲を辟易
とさせてしまう場面がしばしばあるそうだ。

ジェフリー・フェファー、ロバート・I・サットン著『なぜ、分かっていても
実行できないのか』によれば、知識や戦略を有しながら実行できない組織の
原因は、組織内部に存在している。同書の中で挙げられている原因の一つが
「社員同士の競争」についてだ。

社員(部門)同士で足の引っ張り合いをしていれば、知識や情報は共有されず、
相乗効果は発揮されない。本来作るべき「敵」は外にいるはずなのに、社内に
作ることで足並みはそろわず、本来持っているはずの力が発揮されないどころ
か、競合に後れを取りかねない。共通の目標を掲げ個人の限界を他者がカバー
し、チームで成果を上げるために知恵を出し合い、相乗効果を発揮してこそ、
組織はより発展していく。

さて、話を研修に戻そう。
360度サーベイを用い、普段の言動においての「課題」を抽出するプログラムを
進めていくと、やはり木下課長の課題はこの部分にあった。

「○○課(中村課長の所属部署)との連携がうまくいっていない」
「他部署への関心・関与がなさ過ぎる」
「○○課と連携することで、今よりもっと顧客に高いサービスを提供できる
 はず」
「課長会議で時に感情的となり、話が度々頓挫する。話し合いを前向きに、
 冷静に進めていただけるとありがたい」

これらのコメントを前にしてもなお、四の五の言い訳をする木下課長。その煮
え切らない態度に堪り兼ねて、私はズバリ切り込んだ。

「木下課長、もしあなたの上司がそんな上司だったとしたら、どんな想いにな
 りますか?」
「木下課長の部下の皆さんはそんな木下課長の姿を見て、どんな想いになって
 いるか、想像してみてください」

しばらくの沈黙が続いた後、木下課長から冒頭の反省の言葉が発せられる。

『子供のケンカ』、そして『泥仕合』という言葉を耳にしたことはあったが、
木下課長が思わず口にしてしまった、恐らく言い間違えた表現である『子供の
泥仕合』というヘンテコなワードが、私の心にとてもヒットした。

子供のケンカ+泥仕合。
まさに、本来であれば模範を示すべき木下課長と中村課長が取っていた行動は、
周囲(特に部下)にとっては最低・最悪の影響を及ぼしていたはずだ。
そういう意味で『子供の泥仕合』とは、まさに打って付けのネーミングである
と得心したのだった。

さて、皆さんの職場におかれても、こんな『子供の泥仕合』が起こってはいな
いだろうか。また、起こっていることを見て見ぬふりをしていないだろうか。

無用な争いは組織をむしばみ、衰退させるだけである。子供の泥仕合(負の相
乗効果)は、ぜひともすぐに終わらせていただきたいものである。

株式会社フェイス総合研究所 上席執行役員 四宮 敬仁