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コンサルタントコラム

2016年1月20日

◆ 社員の副業のリスクに備える ◆


「社員が副業をすることを止めたいのだけれど、どうしたものか・・・」
お客様先で、時折このような言葉を聞く事があります。

しかし法律で副業や兼業が禁止されている公務員(必ずしも全てが禁止ではないようですが)でない限り、個人の自由が尊重されている以上、社員にとって終業時間を過ぎれば、どのように時間を使おうが、原則自由といえます。

企業側としては、自社の終業後に他社で短時間でも働くようなことを繰り返されれば、当人の健康面での心配も出てきます。また、副業先が同業の会社であれば、秘密情報の漏洩といった危険性も出てきます。
そこで、せめてもの対抗策として、多くの企業にでは就業規則等において、副業や兼業を禁止する規定などを盛り込み、定めていらっしゃるのではないでしょうか。

ただ、副業を規制するといっても、すべてがダメとできないのは当然のことであり、副業は認めないとするよりも「届出制」や「許可制」とする企業が増加しているのが実情であります。

では、実際に副業がOKなのかNOなのか、裁判で争われた上での判決を見てみましょう。
(副業を理由に解雇が認められた例)

小川建設事件 東京地裁 昭和57.11.29
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/394/019394_hanrei.pdf
会社に承認を得ることなく、会社終業後の18時から24時までキャバレーの会計係として雇われていた。会社は就業規則で禁止する二重就労を理由に解雇したため、これを不服として裁判になった。
裁判所は、副業の時間が長時間で本業に影響が出るとして、就業規則の兼業禁止を合理的と認め、解雇を有効とした。

(副業を理由とする解雇が無効とされた例)

東京都私立大学教授懲戒解雇事件 東京地裁 平成20.12.5
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/439/081439_hanrei.pdf
大学に無断で語学学校の講師などをしていたこと等を理由に解雇したが、裁判所は副業の頻度等から教授職に影響がないとして、解雇を無効にした。
※上記リンクは「裁判所ウェブサイト」から判例検索したものです

これらの判例を見てみますと、本業に影響が出ないであろうと考えられる範囲での短時間の副業である場合には認められ、長時間にわたる副業の場合は認められない、となっているように思います。
短時間の目安は、1日2〜3時間程度でしょうか。
しかし短時間であったとしても、仕事内容によっては、判断が変わってくる事も考えられると思います。
工事現場での重労働なら、短時間でも本業に影響が出る可能性は十分にあるでしょうから、認められる副業とは考え難いです。
したがって、やはりあくまでもケースバイケースであると言わざるを得ません。

副業や兼業は原則自由でしょうが、そこにはリスクがつきまとうものと考えるべきだと思います。
仮に、貴社の社員で、夕方から深夜の勤務シフトだったとして、午前中に副業を他社で行っていたとしたら、本業である貴社の業務に影響が出ることもあるでしょうし、1日の労働時間も副業先で数時間勤務した後に貴社での勤務となれば、通算で8時間を超えた分の割増賃金は後に勤務させた貴社の負担(労働基準法第38条)となってしまいます。
また、前記したように副業先によっては、会社情報の漏洩などの危険が生じる可能性もあります。

また、副業をする社員にとっても、本業の終業後に副業先に向かう途中で事故に遭遇し、本業も副業も休業せざるを得なくなった場合には、副業先での平均賃金をもって通勤災害での労災保険の補償を受けることになってしまいます。
この場合、会社は休業されて困ることはもちろん、社員自身にとっても、本業の収入の数割でしかない副業の収入を基準にされた補償額では、何のための副業であるのか、双方にとって不利益になってしまう、といえます。

以上の観点から、副業や兼業に対しては、就業規則に「原則禁止」とした上で、理由がある場合には「届出制」にされたほうが良いと考えます。
社員のプライベートでの自由は尊重しつつ、会社も就業規則を整備してリスクに備えることが、会社と社員お互いの利益につながるものと思います。

株式会社フェイス総合研究所 高田 正和