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コンサルタントコラム

2016年4月20日

◆ リセットが躊躇される、5.99秒! ◆


先々週のことである。
昨年に引き続き、3日間の新入社員研修を担当させていただいた。

研修初日のあるワーク(アクティビティー)にて、A班の掲げた目標は「6秒を切る」ことであった。

この目標の設定。まずは10分間の練習をしていただき、その後にチーム・メンバー全員で協議し、「自班の目標を自主的に設定」してもらう。
この際、多くの受講者が簡単に達成できそうな目標を設定し、代表して目標タイムを申請しに来るリーダーたちが、試験官役を務める私から大目玉を食らうことになる。

「ふざけるな! そんな簡単な目標は、目標とは言えない。」
「チーム全員が本気で協力し合い、全力でやった時にギリギリで出せそうなタイムを目標にしなさい!」
「目標設定やり直し。チーム・メンバーと協議の上、再度、申請し直すように!」

笑顔が消えうせた試験官の私から突然、このように言われた能天気なリーダーたち。
鳩が豆鉄砲をくらったような表情で、すごすごと自班に戻り、チームの仲間たちと戸惑いの表情を浮かべながら目標タイムを慌てて設定し直す。

このようにして私がプレッシャーをかけ、なまなかでは達成できない、超・高い目標を設定してもらうのだ。

リーダーもメンバーたちも本心では、「この目標は絶対に達成するのは無理だろう・・」と感じながらも渋々申請しに来る、といった構図になる。

そんな理不尽な状況の中で、半ば諦めムードでそのワークにチャレンジするA班のメンバーたち。
何度やっても6秒台どころか、7秒台を出すのがやっとというような状況が続く。
諦め。焦燥。やや逆ギレ・・など、受講者の思惑が交錯する中、時間だけがいたずらに過ぎて行く。

そんな中、目標を達成する班が1班、2班と増えて行き・・。
いよいよ残されたA班のメンバーたち。既に達成して安堵の表情を浮かべる周囲の仲間たちを、うらめしそうに見つめ出す。
20分もの間、ただただ「やらされ感の残る」研修プログラムをひたすら繰り返す。
もちろん、タイムは出ない。むしろ、悪くなる一方であった。
一人ひとりの目からだんだんと光が消え失せて行く。

そんな中、A班のチャレンジを見かねた他班の吉田さん(仮名)が、同期であるA班の仲間たちにアドバイスをしてくれた。

吉田さんは研修スタート時の自己紹介において、とても緊張されておられ人見知りで、どちらかというと『引っ込み思案』なタイプ。
そんな大人しいタイプの吉田さんからの思いもよらぬアドバイスに、A班のメンバーたちも真剣な表情で耳を傾け、素直にそのアドバイスを実践し出したのだった。

「今の感じ、良かったよね!」
目標達成への光明が見え始めたA班メンバー。
先程までの陰鬱なムードが嘘のように、ポジティブに、タフにチャレンジを繰り返す。
何度も何度も失敗するのだが、失敗した後が先程とは全く違っていた。

「何がいけなくて、どうすればより良くなるのか?」
傍観者や評論家がいなくなり、A班のメンバー全員が前向きに目標に向かって進み始める。

何かに導かれたように彼らが一体感を持ち、チームが一つになった。と、その瞬間。
タイムを計る私の手の中のストップウオッチの表示を、恐る恐る確認する。

なんと!5.99秒!

0コンマ1秒という奇跡的なタイムで、目標を達成したA班メンバー。
最後まで諦めずにチャレンジしたからこそ、目標を達成することが出来た。
もちろん、こちらは鳥肌ものである。

そんな感動的なストップウオッチの記録を、私は未だリセットすることが出来ないでいる。

株式会社フェイス総合研究所 上席執行役員 四宮 敬仁