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コンサルタントコラム

2016年5月18日

◆ 今時の新入社員は・・・ ◆


長谷川支店長には、それが不思議だった。
あれほど使えなかった柏木くんが、違う支店長のもとで活躍しているという。

どういうことだ?
自分の教え方が悪かったというのか?
まさか?

自分は自分のやり方でずっとやってきた。
少し厳しすぎる、という評価は耳に入ってきてはいたが、「厳しさこそが人を育てる」そのどこがいけないというのだ?

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「柏木です。よろしくお願いします!」
柏木くんが長谷川支店長の下に配属されたのは4月の半ば。
見るからに元気があり、鍛え甲斐がありそうだった。

「期待できそうだな」

長谷川支店長はビシビシと指示を飛ばした。
柏木くんもその指示に忠実に応えた。

しかし、ゴールデンウイークが過ぎる頃、柏木くんに変化が起きた。
なんでもない初歩的なことでミスをするようになった。

「どうした?柏木」
「すみません」

日を追うごとにミスが増えてきた。
そして毎日何かしらのミスをしてしまうようになってしまった。

「俺のやり方についてこれない奴は辞めたらいい」

焦れた長谷川支店長は怒鳴った。
こんな奴を採用したのは人事の責任だ。
いったい、どこを見て採用してるんだ?

柏木くんは日に日に元気をなくしていった。

「お前は使えない。もうお前には何にも任せられない」

長谷川支店長はそう言い放った。
まったく、いまどきの新入社員ときたら。

そして柏木くんは異動になった。6月の末のことだった。

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「柏木くんは本当によくやってくれていますよ」

意外なことを口にしたのは山下支店長だった。
毎年1月に開かれる首都圏の支店長会議の場。
山下支店長は、柏木くんが転属になった先の支店長だった。

「あの柏木が、ですか?」
「ええ、楽しみな若者ですね。特に、私たちには無い視点を持っているんです。この前も業務改善の提案を受けましたよ」
長谷川支店長はうろたえた。

柏木くんに対して、山下支店長は自分とは真逆な評価を抱いている。
あんなに使えなかった奴がどうして・・・。

「長谷川さん、変わるべきは私たちの方なのですよ」
支店長会議がハネた後、会場のホテル近くの居酒屋で話していた二人は、ジョッキに残ったビールを飲み干した。
山下支店長はつづけた。
「新入社員が定着しないのは、新入社員の問題ではなく、我々の問題じゃないですかね」
「我々の・・・?」
「そう。私たちはつい自分と同じような部下をつくろうとする」
「でもそれは組織の伝統であり、企業の良さでもあるはず」
「そう。でも彼らはロボットじゃない」
山下支店長はさらにつづけた。

「新入社員それぞれに得手不得手があり、趣味があり、夢があり、それが個性になっている。その個性を我々が理解し、成長を促さなくては。多様な個性の集団こそが組織・企業を新しくしていくパワーになるんじゃないですかね」

長谷川支店長は話を聞きながら、心の深いところで自分を省みていた。

自分の厳しさとは「自分と同じ型にはめよう」とすることだったのか。
自分の苛立ちは「自分の型にはまらない」ことからきていたのか。

自分のしてきたことは「自分の指示通りに動くロボットをつくること」だったのか・・・。
「相手は変えられない。変わるのは俺の方だったんだ」

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大卒新入社員が3年以内に辞める割合は、約3割とも言われています。
せっかく採用した新入社員が、戦力になる前に辞めてしまうのは、もったいないことだと思います。
文中の長谷川支店長と同じ間違いを起こさないためにも、新入社員への教育だけではなく、受け入れ側への教育も、大切な施策だと私は思っています。
まさに、活かすも殺すも上司次第。
皆様の会社ではいかがでしょうか。

株式会社フェイス総合研究所 上席執行役員 針生 英貴