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コンサルタントコラム

2016年6月29日

◆ 間違った「責任感」がチームの歩みを止める ◆


「違う、違う!そうではない、加藤!何度言ったら分かるんだ!」
社内会議で鈴木社長(仮名)が声を荒げて言う。

「なにも加藤課長(仮名)一人で全部をやれ!といっているわけではない。会社として大事な取り組みをしているわけだから、加藤課長が周りに協力を仰いで進めるべきだろうと、言っているんだ」

社長は、さらに言葉を続けた。
「大事なのは『自分一人でやり切る』ことではなく、『ベストなものを1日でも早く完成させる』ことだ」

『より良い品質』のものを『1日でも早く』
品質と納期の両立は、経営者であれば誰であれ、当然望むものだ。

加藤課長は言葉を振り絞る。
「しかし、この件については私が責任者としてずっと関わっていたわけで、現在、私のスケジュールを見る限り、完成出来るのはどうしても△日後の○月●日になってしまうのです」
「もちろん、周囲の皆さんに協力してもらうことも大事だとは思うのですが、周囲の皆さんもそれぞれやるべき事がありますし、そもそも会社の目標達成を考えると、周囲の皆さんにはそちらに集中していただきたいと思います!」

加藤課長は、自身の想いを社長にぶつけた。

「加藤課長、それは『間違った優しさ』であり、『間違った責任感』だ。周りには一時的に負担をかけてしまうかもしれないが、それより、会社として重要な資料が出来上がることによる周囲の負担軽減の方が、会社としてはメリットが遥かに大きいのだ」

『会社全体の事を考えて、全社の優先順位をもとに行動してほしい』
というメッセージが、鈴木社長の言葉の奥にある。

現場を預かる加藤課長と、会社全体を見渡す鈴木社長。
それぞれの視点があり、話が平行線で進み、一向に結論に辿り着かない。
会議の時間はすでに4時間を超えており、周囲に疲労の色が浮かぶ。

その状況を見かねた会議出席者の一人である新任課長の大谷さん(仮名)が口を開いた。
「自分、この部分の資料作成、お手伝いしますよ」

続けて、古参社員である中田課長(仮名)も
「俺に任せてくれれば、データの照合とかならやれるよ」

加藤課長は、周囲からの思ってもいなかった助け舟に救われる形となって、この一件に関する完成スピードは早まり、会議は無事に終わった。

後日、私は加藤課長と話をする機会があったので、その会議の席上で加藤課長にどのような気づきが生まれ、心境が変化することとなったのかを尋ねてみた。

「それまで自分は間違った『責任感』を持っていました。『より良いものを作る事』、そしてそれを『一日でも早く作る事』より『自分が責任者なのだから、すべて自分でやらないと』という、個人の価値観を優先していたのです」

「会社全体の中で、その仕事の優先順位は高いはずですが、仕事を進めるに際し、周りも大変だろうからとか、早く完成させるよりも、自分が納得する形で仕上げたい、という気持ちが自身の判断力を鈍らせていました。そこには『チームの成果』という観点が抜けていたことに気づかされました」

会議の場で、加藤課長は新たな気づきを得たようである。
仕事の優先順位を考える際には「チーム」の優先順位を明確にし、そこに責任感を持つべきだ。そうでないと、今回の加藤課長のようにチーム全体の歩みを止めてしまうことがある。

責任感はどこに対して持つべきか。
それが「エゴ」になっていないか。
私自身も気をつけなければならないな、と思った。

株式会社フェイス総合研究所 上席執行役員 針生 英貴