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コンサルタントコラム

2016年11月16日

◆ 矢面に立つ ◆


私が新卒で入社して約1年半が経とうとしていた夏、お店の中でお客様同士の殴り合いの喧嘩が発生しているという連絡をスタッフから受けた。
急いで現場に駆け付けると、渦中のお客様はすぐに分かった。頭に血を上らせている30代の男性二人。一触即発の空気が立ち込める中、一方がもう一方に殴りかかろうとしているのを見た私は、慌てて間に割って入った。

「やめてください、相手は怖がっているじゃないですか!?」

しかし、この言い方がまずかった。殴りかかろうとした人を仮にAさん、殴られそうになった人をBさんとすると、実は私が駆け付ける前、BさんがAさんを殴っていたらしい。Aさんは仕返しとばかりにBさんに殴りかかろうとしていた。
そこに私が入って「相手(Bさん)が怖がっているじゃないですか!?」
と言ったものだから、先に殴られたAさんは腑に落ちるはずもない。

「何で止めるんだ、俺は殴られたんだ!」

私に詰め寄るAさん。狼狽する私にAさんがさらに追い打ちをかける。

「仲間を呼んだから、覚悟しとけ!」

その言葉に、自分が誰を相手にしたのか察したBさん。
血が上って真っ赤だった顔色は、見る見るうちに青ざめていった。

気ばかりがはやり、事態を収拾できずにいる私。その時、先輩社員の坂口さん(仮名)が助け船を出してくれた。
別室に二人を案内し、冷静に双方の話に耳を傾ける。
穏やかな低姿勢でなだめること4時間、AさんとBさんはようやく和解した。

“事件”が一段落した時、私は迷惑をかけてしまった坂口さんに、言葉では表せないほどの感謝の気持ちでいっぱいだった。

古い事件の話をしてしまい恐縮ですが、この“事件”を思い出したのは、あるお客様から管理職層の研修のご依頼をいただき、オリジナルの研修を作成している最中だった。

ご依頼頂いたお客様は、サービス業において関東を中心に急成長を続ける企業。
話を伺うと、会社の中堅を担う課長陣の『上司としてのあり方』に課題を感じているようだった。

「忙しいのは分かる。しかし大事な場面や部下が解決できない時に、『見て見ぬふり』をするのは上司としていかがなものか」

当の課長陣の中には、部下の成長を願い、あえて厳しい局面を自力で乗り越えさせようと、あえて試練を与えているのかもしれない。
しかし、『見て見ぬふり』のまま、部下がトラブルに対応しきれずに問題が膨れ上がり、会社に大きなダメージを与える、あるいは部下の離職につながってしまっては、これは本末転倒としか言いようが無い。

そこで、期待したいメッセージとして出てきたのが『矢面に立つ』だった。
そもそも『矢面に立つ』とは、
『批判や非難を、集中的に浴びる立場に身を置くこと』である。

その由来は、
『戦のときに敵の矢が飛んでくる、もっとも当たりやすい戦の最前線に立ち、戦うこと』
からきているそうだ。

孫正義氏は「難事に突き当たった時に眼をそらす人は、リーダーにはなってはいけない」と言う。
松下幸之助氏も生前『矢面に立つ精神』を『男子の本懐』と説いた。

研修を作っている中で、自分自身も先の古い事件を振り返り、先輩社員の坂口さんの行動はまさしく『矢面に立つ』そのものだったと思う。
お客様の感情を一身に背負い、私や店を守ってくれた。

『矢面に立つ』

リーダーと呼ばれる人であれば『心にとどめておきたい心構え』として、忘れずにいたいと思う。

株式会社フェイス総合研究所 上席執行役員 針生 英貴